失敗しない生産管理システム導入準備──現状分析から始める3ステップ
「社長から生産管理システムの選定を任されたけれど、どこから手を付けてよいか分からない」
システム導入を託された立場で最初に迷うのは、何を基準に選び、どう準備を進めるかという点です。
ここを外すと、せっかくのシステム導入が「失敗プロジェクト」になってしまう恐れがあります。
システム選定の基準と準備の土台になるのが「現状分析」です。
このページでは導入準備=現状分析の進め方を3つのステップに分けて解説します。
- 準備不足が失敗につながる理由
- 生産管理システム導入準備=現状分析の3ステップ
- 現場を「主役」にする巻き込み術
準備不足が失敗につながる理由
「とにかく生産管理システムを導入すればすべてうまくいく」──この考え方が一番危険です。
準備が不十分なまま導入すると、次のような失敗に陥りがちです。
- 自社の課題に合わない機能ばかりで使われない
- 導入コストが膨らんだのに業務改善効果が出ない
- 現場が反発し、結局Excelや紙運用に逆戻りする
つまり、導入前に「自社の業務で何が問題なのか」を分析できていないことが失敗の原因になります。
生産管理システム導入準備=現状分析の3ステップ
システムの導入準備でまず行うべきは「現状分析」です。
分析は次の3ステップで進めると整理しやすくなります。
ステップ |
内容 |
目的 |
①経営者ヒアリング |
社長の本音や狙いを引き出す |
導入の方向性を明確にする |
②現場ヒアリング |
担当者・作業者の困りごとを拾う |
システムに必要な機能を把握する |
③業務フローの可視化 |
受注から出荷までの流れを図示 |
問題点を見える化し、改善策を検討する |
①経営者ヒアリング
最初に取り組むのは、経営者の意向を把握することです。
社長が何に困っていて、どのような会社にしたいのかを具体的に聞き出しましょう。
(質問例)
- 「納期遅れが多くて困っていませんか?」
- 受注はあるのに利益が出ていないと感じませんか?」
- 情報共有ができていないことにストレスを感じていませんか?」
- 「社員の原価意識に課題はありませんか?」
- 「支払予定が不安定で、資金繰りに影響していませんか?」
課題が複数ある場合、一度にすべてを解決するのは難しいので、優先順位をつけてもらいましょう。
②現場ヒアリング
次に、実際にシステムを使う現場の声を集めます。
部門責任者だけでなく入力担当や現場作業者なども含めて、幅広く意見を聞きましょう。
(質問例)
- 「毎日どの作業に苦労していますか?」
- 「紙やExcelで何度も同じ情報を記入・入力していませんか?」
- 「在庫確認や納期調整で困ることはありませんか?」
- 「現行のやり方でミスが起きやすい工程はどこですか?」
一見ITと関係ない話でも、業務フロー上の問題を示すヒントになります。
例:机が狭い・倉庫の出し入れに手間がかかる
→ 机の広さや倉庫の使い勝手でなく、業務フローに問題がある可能性も
③業務フローの可視化
現場業務の流れを図に書き出すと、問題点が明確になります。
<手順>
1. 受注 → 設計 → 調達 → 製造 → 検査 → 出荷 → 請求 などの業務の流れを矢印で書く
2. 各工程で「どんな作業があるか」「どこにムダやミスがあるか」を書き込む
3. 問題の原因と対策の方向性を整理する
<問題と対策の考え方>
問題の種類 |
対策の方向性 |
手作業が多くミスも多い |
システム化が有効 |
入力が面倒で定着しない |
システム運用ルールの見直し |
社内ルールが曖昧 |
システム導入より先に業務ルールの整備 |
外注先との情報の食い違い |
外注先との連携強化や交渉 |
ここまでの現状分析3ステップ(経営者ヒアリング、現場ヒアリング、業務フロー可視化)が、システム導入の成否を決めます。
- 会社全体で「何が本当の課題なのか」を共通認識にできる
- システムに求める要件を具体的に整理できる
- 導入後の評価指標(効果測定の基準)が明確になる
これにより「導入したけれど役に立たない」という失敗を防げます
現場を「主役」にする巻き込み術
システムを使うのは現場です。
現場が納得しない限り、どんなに高機能なシステムを導入しても定着しません。
以下の「巻き込み術」で現場にシステム導入への主体性と責任感が生まれます。
- 導入準備の段階から現場メンバーを参加させる
- 小さな改善でも「便利になった」と実感させる
- 一人でも反対する人が出ないように合意形成を図る
現場を上手に引き入れて、導入後の定着率を高めましょう。
まとめ:準備を制する者が導入を制する
生産管理システムの導入準備は単なる下準備ではなく、成功の9割を決める要です。
- 経営者・現場の声を整理する
- 業務フローを可視化して課題を明確にする
これらを押さえることで、システム導入の効果を最大限に発揮できます。
迷ったらまず「現状を見える化すること」から始めましょう。
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