生産管理システムを導入前に「本番同様に試す」方法|トレースデモとは

システム導入後に「思っていたのと違う」「現場で使いにくい」といった問題が起きることがあります。
それを防ぐためには、導入前に実際の業務データを使って本番同様に試すことが重要です。
このおためし運用を「トレースデモ」と呼びます。
このページでは、「トレースデモ」の実施手順を組立業・加工業向けにわかりやすく解説します。


導入前の実運用テスト=トレースデモが重要な理由

多くの企業では、システム選定時にメーカーのデモンストレーションを受けます。
しかし、その多くは「機能紹介」にとどまり、実際の業務で使えるかどうかは分かりません。
そこで「トレースデモ」が重要になります。

「トレースデモ」とは…
システム導入前に実際の受注・部品表・発注・作業指示・作業実績などのデータを使い、
複数の受注データを模擬的に運用するテスト。
一般的なデモとの違いは「実際に社内で使っているデータを使う」点である。

「トレースデモ」を行うと、次のような効果が得られます。

この事前検証が不足すると、「導入したが現場が使えない」「結局Excelに戻った」といった失敗を招きます。
システムが本当に現場業務に適合するかどうか、「トレースデモ」を行って判断しましょう。


トレースデモの進め方(組立業向け・加工業向け)

組立業向け・加工業向けの進め方をそれぞれ説明します。

事前準備
事前準備は組立業・加工業に共通の項目です。
「かっこいいデモを見る」のではなく「自社の業務で試す」ことを目的に設定します。
以下のような実際に使用している社内資料を準備しましょう。

資料名 用途
受注票 受注入力時の情報確認
部品表 組立構成・展開処理の確認
実行予算書 原価・予算入力の再現
作業指示書 作業指示書発行の流れの検証
発注書 発注手順・購買フローの確認

組立業向けトレースデモの流れと確認事項
①受注入力
  ・実際の受注票をもとに、事務担当者が入力
  ・入力できない項目・迷う項目はないか
②部品表の登録
  ・組立業では部品表の登録を毎日繰り返すため、最重要項目
  ・日常業務と同じ流れで操作する
  ・ 項目の順序・内容・桁数が自社運用に合っているか
  ・ 現場視点で使い勝手が良いか
③実行予算の登録
  ・工程別・費目別に分けて入力できるか
  ・原価管理との連携や予実管理がスムーズにできるか
④作業指示書
  ・登録した受注・部品情報から、正しく作業指示書が発行できるか
  ・(製品別・工程別・担当者別に)出力内容が正確か、レイアウトが現場で使いやすいか
  ・指示書の出力タイミング(登録直後/一括出力など)が業務に合っているか
⑤発注書
  ・部品表や実行予算の情報をもとに、発注書を正しく作成・出力できるか
  ・発注先・納期・数量・単価など必要項目が揃っているか
  ・発注書発行から仕入処理への流れがスムーズにつながるか


トレースデモで確認すべき5つのポイントと実施のタイミング

<トレースデモで確認すべきポイント>
チェック項目 確認すべき内容
操作のシンプルさ ・ひとつの処理に何回の画面遷移が必要か
・直観的に入力できるか
項目の柔軟性 自社特有の項目を追加・編集できるか
処理スピード 一連の入力でテンポよく処理できるか
エラー処理 ・入力ミス時のメッセージは親切か
・ミスの修正がしやすいか
帳票出力 Excel・PDF出力など、指定のレイアウトで印刷できるか

<トレースデモを実施するタイミング>
トレースデモは、導入を最終決定する前に行います。
導入失敗のリスクを大幅に減らすために、最低でも丸一日かけて丁寧に実施しましょう。
業務ごとの向き・不向きを確認しながら、実際にシステムを導入したときの感覚がつかめます。


まとめ:トレースデモで「実際の業務で動くか」を確かめる

システム導入の成否を決めるのは、画面の見た目や機能の数ではありません。
現場の業務がどれだけスムーズに流れるかがすべてです。
トレースデモは、無駄な投資や導入後の未稼働を防ぐ最も有効な手段。
導入を最終決定する前に、「実業務データで1日以上動かしてみる」ことをおすすめします。

戻る