原価差額配賦、製造間接費の基本的な考え方

1. 個別原価計算とは?

製品や工事など“案件ごと”にかかったコスト(材料・外注・人件費など)を集計して、 その製番ごとの原価を計算する方法です。
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2. 直接費 vs 間接費

区分 内容 集計方法
直接費 直接製番に紐づく費用
(材料費、外注費、直接作業者の人件費)
製番ごとに直接集計
間接費 製番に直接結びつかない費用
(共通作業者の人件費、電気代、減価償却など)
配賦(分配)して製番に割り当て

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3. 原価差額配賦とは?

たとえば、直接労務費は「予定賃率 × 作業時間」で見積もりますが、実際の賃金とはズレが生じます。
内容
予定賃率:¥2,000/h × 100h = ¥200,000
実際賃金:¥2,200/h × 100h = ¥220,000
差額(原価差額):¥20,000 → これを各製番に差額として配賦する
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4. 製造間接費の種類と例

分類 内容・例
間接材料費 工具、補助材料、油脂など(小さな部品や消耗品)
間接労務費 工場長や管理者など、複数製番に関与する人の給料
間接経費
以下に分かれる:
┗ 固定費:減価償却費、賃料など
┗ 変動費:水道光熱費、燃料など

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5. なぜ配賦が必要?

製造間接費は製番に直接つけられないため、適切なルール(配賦基準)に従って割り振る(=配賦)必要があります。
目的は「より正確な個別原価」を出し、「会計上の製造原価と一致」させるためです。
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6. 配賦基準の種類と選び方

(ア)生産量(数量)基準
• 内容:製造した製品の個数に応じて配賦
• 向いているケース:
 各製品のコスト差が少なく、数量に比例して間接費が発生する場合
• 例:量産品(ペットボトル、ネジ、菓子など)
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(イ)直接作業時間基準
• 内容:直接作業者の作業時間に応じて配賦
• 向いているケース:
 間接費が人の動き・作業に連動して増える場合
• 例:工程が複雑で、人手に依存する製品(航空部品、装置組立など)
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(ウ)重量基準
• 内容:各製品の重量に応じて配賦
• 向いているケース:
 重量が運搬コストや倉庫費、設備負荷などに影響する場合
• 例:鋼材、機械部品、大型設備など
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(エ)機械作業時間基準
• 内容:製品ごとの機械使用時間に応じて配賦
• 向いているケース:
 設備の使用が主な原価要因であり、電気代や機械の減価償却が大きい場合
• 例:NC旋盤、射出成型機、大型加工機を使う工場

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まとめ

個別原価計算では、材料費・外注費・作業者の直接人件費など、製番(案件)ごとに明確に紐づく費用は「直接費」として、そのまま各製番に集計します。
• 一方、工場全体で発生する電気代や管理者の給料、共通の工具や補助材料などは、特定の製番に直接紐づけることができないため「間接費(製造間接費)」となり、一定のルール(配賦基準)に従って、各製番に割り振る(=配賦する)必要があります。
• また、作業者の人件費については「予定賃率 × 作業時間」で計算されますが、実際の給与とは差が生じる場合があります。この 差額(原価差額)は、後から集計し、製番に追加で配賦する必要があります。
• こうした処理の目的は、製番ごとの正確な原価(個別原価)を求めることと、会計上の「製造原価」と一致させることの2点です。

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