生産管理システムは「処理スピード」が命!比較で見落とされがちな本質とは?
生産管理システムを導入・比較する際、多くの企業は「機能の多さ」に目を向けがちです。
しかし、「処理スピード」という視点が抜けてしまうと、現場で使い物にならないシステムを選んでしまう危険性があります。
特に、個別受注型の製造業においては扱うデータが多岐にわたり、処理速度の遅さが業務効率に直結するため、注意が必要です。
このページでは、なぜ処理スピードが重要なのか、どこを確認すべきなのかを明確にし、導入時に失敗しないための判断基準をご紹介します。
- 「処理スピード」が見落とされがちな理由
- 個別受注型製造業で「処理スピード」が致命的になる理由
- 処理が遅いと現場業務が止まる
- 導入前に確認すべき「処理スピード」3つのチェックポイント
「処理スピード」が見落とされがちな理由
生産管理システムの導入検討時、多くの企業が次のようなポイントを重視します。
- どんな機能があるか
- 費用はどの程度か
- サポート体制は整っているか
しかし、使い勝手や現場での定着を左右する「処理スピード」は、営業資料やカタログだけでは見えにくいため、判断材料から抜け落ちがちになります。
さらに、デモンストレーションでは軽快に見える操作も、テスト用の少量データであることが多く、本番運用後の速度劣化リスクは把握しづらいのが実情です。
「現場の誰も使わない多機能システム」より「軽快に動くシステム」のほうが、現場で使われ続けるため、新システム導入に見合うリターンが得られます。
個別受注型製造業で「処理スピード」が致命的になる理由
個別受注型の業態では、製品ごとに設計や部品構成が異なる「一品一様」である場合が多く、標準化されたマスタを使い回せません。
そのため、類似仕様の注文が来たときなどの部品単価検索には、過去の仕入履歴を利用して過去単価を調べます。
単価検索で必要なデータを引き出すには、約5年分の仕入データの保持が必要です。
結果として、日々扱うデータ量が膨大になり、検索や処理にかかる負荷が大きくなります。
<データ量の例>
| 項目 |
件数 |
| 月間仕入明細 |
10,000 |
| 年間仕入明細 |
120,000 |
| 5年間累計 |
600,000 |
日常的にデータの検索・更新が必要な環境で処理が遅いシステムを使い続ければ、現場にとって大きなストレスとなります。
処理が遅いと現場業務が止まる
処理スピードの問題は、単なる不便さにとどまりません。
以下のように、業務そのものが停滞し、最終的にはシステムが使われなくなる可能性すらあります。
| 処理内容 |
遅延による影響 |
| 単価検索 |
作業が中断されるイライラが続き、最終的に担当者がシステムの使用を放棄 |
| 明細印刷 |
社内確認や客先への提出が遅れ、納期トラブルの原因になる |
| 部品登録(数百件) |
入力に時間がかかり、現場が手待ち状態になる |
導入当初は問題がなくても、データが年単位で蓄積されたときに速度が劣化すると、取り返しがつかなくなることがあります。
導入前に確認すべき「処理スピード」3つのチェックポイント
システムの処理速度は、導入前に徹底して確認する必要があります。
以下の3つの観点から検証しましょう。
① 実業務を模した操作テストを行う
可能であれば、デモ機を借りて以下のような操作を自社のデータで試してみましょう
- マスタ登録→見積→受注→発注 までの一連の流れ
- 担当者が日常的に行う処理を複数回繰り返す
② 処理スピードの体感値を計測する
| 操作内容 |
判断基準 |
| 部品検索 |
1秒以内で表示されるかどうか |
| 単価履歴表示 |
数万件の中から瞬時に抽出できるか |
| 500件の部品登録 |
数秒〜十数秒で完了するか |
| 帳票出力 |
数秒で印刷プレビュー表示できるか |
ほんの数秒の遅れも、毎日の積み重ねで大きなストレスにつながります。
③ 将来的なデータ増加に耐えられる設計か否かを確認する
ベンダーに以下のような質問をしましょう。
- 「過去5年分のデータでも1秒以内の検索速度を維持できますか?」
- 「古いデータを分離している場合、現場の検索性はどうなるか?」
設計思想や実績を確認することで、将来的なパフォーマンス劣化のリスクを見極めることができます。
まとめ:処理スピードが速いからこそ、現場に根づく
生産管理システムは、5年、10年と使い続けられることを前提に導入します。
そのため、初期の快適さだけでなく、長期的な処理速度の安定性が重要です。
<処理スピードの見落としで起こること>
- 多機能でも現場で使われない
- システム活用が定着しない
<処理スピードを重視した選定で意識すべきこと>
- 不満が蓄積し、旧来の管理に逆戻りする
- 実業務を模した操作テストを行う
- 実機での体感速度を確認する
生産管理システムの真の価値は、現場でストレスなく使い続けられるかどうかにかかっています。
機能一覧や価格表では見えない「処理スピード」の視点を持ち、現場と未来に強いシステムを選定しましょう。
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