中小製造業の現場では「販売管理システム」と「生産管理システム」のどちらを先に導入すべきか、判断に迷うケースが多いようです。
営業部門が販売管理の効率化を優先したい一方で、製造現場からは生産計画や工程管理の仕組みが欲しいという声が上がります。
導入順序を誤ると「データの二重管理」「現場と営業の情報断絶」「追加コストの発生」といった問題が生じるリスクがあるため、注意が必要です。

このページでは、製造業が失敗しないためのシステム選定ポイントを整理し、どのような場合にどちらのシステムを優先すべきかを解説します。

製造業で販売管理と生産管理、どちらを先に導入すべきか

販売管理システムは「受注・発注・売上・仕入・在庫」といった取引情報を扱うのに対し、生産管理システムは「工程計画・手配・進捗・原価」といった製造プロセスを対象とします。
どちらも重要ですが、導入の順序を誤ると次のような事態が起こる可能性があります。 「現状の業務に何が欠けているか」を整理した上で、適切な導入順序を選ぶことが重要です。

販売管理と生産管理―システム導入判断のポイント3つ

① すでに販売管理システムを使っている場合
すでに市販の販売管理システムを運用している企業は、その販売データ（売上履歴・取引先情報・在庫台帳など）が資産になっています。
この場合、乗り換えよりも 既存の販売管理と連携できる生産管理システムを選べば資産が無駄になりません。

② 販売管理システムが未導入の場合
まだ販売管理システムを導入していない場合は、生産管理に販売機能が付属している一体型システムを選ぶのをおすすめします。
受注から生産・出荷・売上までを一つのデータベースで一元管理できるからです

③ 商社的な取引が多い場合
製造業といっても「受注→即発注→即売上」という商社的な流れが多い企業もあります。
この場合は工程管理や製造指示よりも、販売・仕入のスピードと正確さが重要です。
市販の販売管理システム単体をまず導入し、在庫や伝票処理の効率化を優先するのが現実的です。

＜販売管理システムと生産管理システムの違い・役割・導入優先度＞

下記は、3つの判断ポイントをふまえた販売管理システムと生産管理システムの比較表です。
この表を活用すれば、自社の状況に合わせてどちらを優先すべきかを直感的に判断できます。

項目	販売管理システム	生産管理システム
主な対象	受注・発注・売上・仕入・在庫	生産計画・工程・進捗・原価
利用部門	営業・購買・経理	製造・生産技術・資材
目的	取引や販売プロセスを効率化し、顧客対応を迅速化	製造プロセスを最適化し、納期遵守と原価低減を実現
扱う情報	顧客データ・売上伝票・在庫台帳	生産計画・作業指示・進捗データ・原価計算
強味	取引・在庫の可視化、営業力の強化	製造現場の見える化、工程効率化、コスト管理
導入効果	請求・在庫・受発注の精度向上	リードタイム短縮、進捗管理の徹底、利益率改善
導入の優先度 （判断基準）	① すでに販売管理を使っている →既存の販売管理はそのまま活用し、連携できる生産管理を追加
	② 商社的な取引が多い →販売管理を先に導入	③ 販売管理が未導入 →販売機能付き生産管理を導入

中小製造業が失敗しないための選び方

システム選定では「現場の実情に合っているか」を最優先にすべきです。
以下のポイントを確認して、導入するシステムを選定しましょう。

① 既存の販売管理システムに連携できる生産管理システムを追加する場合
システム同士がCSV連携ができるか、API対応はできるか

② 販売機能付き生産管理システムを導入する場合
上伝票の入力項目（品番・品名・図番・型式・備考など）が柔軟に入力できるか

③ 販売管理システムを先に導入する場合
将来的に生産管理に拡張できるか

まとめ：製造業のシステム選びは販売管理と生産管理の連携・導入順序を見極める

製造業におけるシステム導入は、既存システムの有無や取引のしかたによって対応が異なります。 大切なのは「今ある資産を活かすこと」「業務に合うこと」「日常的に使いやすいこと」です。
これらを踏まえて選定すれば、導入後の失敗を防ぎ、営業と現場がつながる強い仕組みを構築できます。