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実行予算を立てるには?― 受注後の発注前金額チェックで利益を守る、現実的な運用フロー

お客様に対して構想図・仕様書を作成して見積を提出し、無事受注となった――その次に工場の関係メンバーに依頼して製作してもらう場面で、「実行予算を立てないところが意外と多くあります。
「正式に取れた受注金額はこれだけです」と工場関係メンバーに伝え、詳細設計に入ってもらうのですが、ここで実行予算がないと、知らぬ間に赤字案件になることがあります。
このページでは、受注金額の15%オフを目安にした実行予算の立て方、発注前の金額チェックで利益を守る運用フロー、現実的な運用方法を解説します。

「実行予算なし」で起きる赤字の構造

受注後、実行予算を立てずに「受注金額これだけです」とだけ工場に伝えて製作に入ると、次のような問題が発生します。

「実行予算なし」は「コスト意識なし」と同じ

工場関係メンバーに受注金額しか伝えないと、各担当者は自分の担当範囲で「やるべきこと」をやるだけになり、全体の収益責任を持つ人がいなくなります。
実行予算は、各担当者が「コスト意識を持って判断する」ためのモノサシです。

推奨:受注金額の15%オフで実行予算を立てる

工場が忙しいのは当然わかります。作り手側に早くいいものを作ってもらいたい営業の気持ちもわかります。それでも、まずは受注金額の15%オフなどの実行予算を必ず立てることから始めましょう。

15%オフの実行予算の意味

項目 金額(例)
受注金額 1,000万円
実行予算(受注金額の85%) 850万円
目標粗利 150万円(粗利率15%)

この実行予算を設計・資材・製造の全メンバーで共有し、「850万円以内で作る」という目標を全員で持つことが、利益確保の出発点になります。

15%という数字の根拠

15%という数字は絶対的なものではなく、業態・案件によって調整が必要です。一般的には次のような目安があります。

案件特性 実行予算比率(受注金額に対する%)
標準的な案件 85%(粗利15%確保)
競争激化案件 90%(粗利10%確保)
余裕のある案件 80%(粗利20%確保)
戦略案件・初取引 95%(粗利5%)も許容

理想:発注前の金額チェックを徹底する

実行予算を立てた次のステップとして、理想的には発注前の金額を確定して、受注金額または実行予算と比較し、承認をとってから発注する癖作りができれば素晴らしいです。

発注前金額チェックの運用フロー

理想的な発注前チェックの流れ
  1. 受注 → 実行予算策定(受注金額の85%)
  2. 詳細設計 → 部品表確定
  3. 各部品の発注前見積を取得
  4. 見積合計を実行予算と比較
  5. 予算内なら承認・発注、予算超過なら仕様見直し
  6. 発注後はカムアップで納期督促
発注後の値段交渉は限界がある

発注して入ってきてしまった仕入部品が予想以上に高かったときは返品することもできません
入荷後は値段交渉にも限界があります。だからこそ、発注前のチェックが利益を守る最大の防衛線になります。

「理想ばかり言うな」という現場の声

「理想ばかり言うな」とよく言われます。確かに、現場をやっていれば上記のような運用では納期に間に合わないことはよくわかります。すべての部品で発注前見積を取っていたら、納期がどんどん延びてしまいます。

現場でよく見られる運用

実際の現場では、次のような運用がよく見られます。

これも一つの現実的な方法ではありますが、すでに発注済みの部品は値段交渉の余地が少なく、リカバリーが難しいケースが多くあります。

現実的な解決策:製番ごとに使い分ける

資材課で現場をやってきた経験から言うと、製番(工事番号)ごとに使い分けるのが最も現実的な方法です。

納期余裕度による使い分け

納期状況 運用方法 理由
納期に余裕がある製番 実行予算・発注前金額チェックを徹底 事前に交渉する時間があり、利益確保が可能
納期が厳しい製番 値決めは後(先に発注して納期確保) 納期厳守を優先、後で交渉と実績原価チェック

すべての案件を理想形で運用するのではなく、納期と利益確保のバランスを案件ごとに判断するのが実務的です。

「仕入後値決め」と「発注前値決め」は工数が同じ

「事前にチェックすると時間がかかる」と思われがちですが、よく考えてみると、仕入したあとに値決めするか、発注前に値決めするか、工数は実は一緒です。

両者の工数比較

項目 発注前値決め 仕入後値決め
見積取得 必要 必要(事後でも交渉が必要)
仕入先との価格交渉 必要(事前) 必要(事後)
承認プロセス 必要 必要
利益確保の効果 (事前に妥当性確認) (事後では交渉余地少)

同じ工数をかけるなら、できる限り事前に決められる体制を作るほうが、利益確保の効果が圧倒的に大きくなります。

実行予算運用の3段階ステップアップ

いきなり全案件で発注前金額チェックを徹底するのは難しいので、段階的にステップアップするのがおすすめです。

実行予算運用の3段階
  1. 第1段階:全案件で受注金額の15%オフの実行予算を立てる
  2. 第2段階:金額の大きい部品(製番原価の上位3〜5部品)のみ発注前チェック
  3. 第3段階:納期余裕のある製番は全部品で発注前チェック、納期厳しいものは値決め後

この3段階を徐々に進めることで、現場の混乱を最小限にしながら、確実に利益確保の体制を整えられます。

実行予算管理のチェックリスト

実行予算運用の確認事項
  • 受注時に必ず実行予算(受注金額の85%目安)を立てているか?
  • 実行予算は設計・資材・製造の全員に共有されているか?
  • 金額の大きい部品は発注前に見積を取っているか?
  • 見積合計が実行予算を超えたら仕様見直しの仕組みがあるか?
  • 仕入実績は製番別にリアルタイム集計されているか?
  • 実績原価が実行予算に近づいたらアラートが上がるか?
  • 案件終了時に予実差異分析を実施しているか?

実行予算管理を支えるインプローブのシステム

インプローブの生産管理システム「Prevision」製番別原価管理システム「アクロス」は、実行予算管理に対応した機能を備えています。

Previsionの実行予算機能

アクロスの活用

「アクロス」は、まずは原価管理中心で資材発注・工数実績収集をしたい企業向けの製番別原価管理システムです。実行予算と実績原価の比較管理にも対応しており、個別受注生産の事業規模が低めの企業様に最適です。

まとめ|「事前管理」で利益を守る

受注生産の利益確保は、「受注後すぐに実行予算を立てる」ことから始まります。受注金額の15%オフを目安に実行予算を策定し、設計・資材・製造の全員で共有する――これだけで、案件ごとの利益意識が大きく変わります。

理想は発注前の金額チェックを徹底することですが、納期との両立を考えると、製番ごとに「発注前値決め」と「値決めは後」を使い分けるのが現実的です。仕入後値決めと発注前値決めは工数が同じなら、できる限り事前に決められる体制を作るのが利益確保の最短ルートです。

「実行予算の運用を仕組み化したい」「発注前の金額チェックを徹底したい」というご相談、お気軽にお寄せください。インプローブでは、貴社の業務規模に合わせた最適な実行予算管理ソリューションをご提案します。

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