個別受注型製造業における個別原価計算の考えかたとは?― 実践上(管理会計)と経理上、2つの原価計算を両立する
しかし、個別原価計算には「実践上(管理会計)」と「経理上」の2つの考え方があり、両方の特性を理解しないと「現場のコストダウン意識が育たない」「決算と現場感覚がズレる」といった問題が発生します。
このページでは、2つの原価計算の違いと、両方を両立する考え方を解説します。
個別原価計算の2つの考え方
個別受注型製造業における個別原価計算は、目的によって2つに分けて考える必要があります。それぞれ計算タイミング・精度・使い方が異なります。
| 区分 | 目的 | 計算タイミング |
|---|---|---|
| 実践上の原価計算(管理会計) | 現場のコストダウン活動・意思決定 | 工事進行中・終了時 |
| 経理上の原価計算 | 決算・税務申告 | 給与確定後(月締め後) |
実践上の原価計算(管理会計)
実践上の原価計算とは、現場や経営層がリアルタイムに儲けを把握するための原価計算です。スピードと使いやすさを優先し、多少の誤差は許容します。
実践上の原価計算の手順
- 昨年度実績において予定賃率を事前に決めておく(アワーレート)
- 個別の工事番号(製造番号)ごとに発生した材料費・外注費を集計
- 社内の作業時間 × 予定賃率(アワーレート)で労務費を算出
- 経費を合計算出
- 工事番号ごとに原価発生額を単純積み上げ
- 受注金額・実行予算と比較して儲かるかを判断
この方法なら、工事の進行中でも「今いくら使っているか」「あとどれだけ余裕があるか」がリアルタイムに把握できます。現場のコストダウン活動に直結する原価計算です。
実際の給与確定を待たずに予定賃率(アワーレート)で先に計算することで、原価情報をリアルタイムに提供できます。
予定賃率は昨年度実績などをベースに、年初・期初に設定するのが一般的です。
経理上の原価計算
経理上の原価計算は、決算・税務申告のための正確な原価集計です。実際に支払った給与を反映して、正確な金額を出すことが重要です。
経理上の原価計算の特徴
- 工事番号別の集計に加えて、集計期間が必要
- 材料費・外注費:単純に集計期間の合計(工事番号別)
- 労務費:集計期間の工数 × 予定賃率の集計値を、実際に払った給与等の費用で再算出
- 間接費・固定費も期間で按分して反映
正確性が重要なため、計算には時間がかかります。実際の給与・諸経費が確定してから集計するため、早くても工事が終わった1ヶ月後でないと算出できません。
経理上の原価計算だけでは現場が動かない
経理上の原価計算だけに頼ると、深刻な問題が発生します。
個別受注型製造業の場合、原価算出するのに給与を支払った後に労務費・間接費を確定していると、早くて工事が終わった1ヶ月後しか原価が算出できません。
算出が遅くなると、現場がコストダウンの意識なしに工事を進めがちになり、原価意識が徹底できません。
経理上だけに頼る場合の弊害
- 工事終了後1ヶ月以上経ってから「赤字だった」と判明
- 原因究明する頃には当事者の記憶も薄れて改善策が立てられない
- 次の類似案件には原価情報が間に合わない
- 現場が「原価は経理の仕事」と他人事になる
- コストダウンのPDCAサイクルが回らない
結論:両方を加味する
結論としては、「実践上の原価計算」と「経理上の原価計算」の両方を加味するのが望ましい運用です。それぞれが補完関係にあり、片方だけでは個別受注型製造業の原価管理は成立しません。
両方を加味する運用イメージ
| タイミング | 使う原価計算 | 用途 |
|---|---|---|
| 工事進行中 | 実践上(速報値) | 残予算の確認、コストダウン活動 |
| 工事終了直後 | 実践上(確定速報) | 儲け判断、次案件への反映 |
| 月締め後 | 経理上(確定値) | 決算、予実差異の分析 |
| 期末 | 経理上(年間集計) | 予定賃率の見直し材料 |
速報値で現場のコストダウン意識を維持し、確定値で正確な決算と次期の予定賃率設定を行う――この両輪が回ると、個別受注型の原価管理が機能し始めます。
予定賃率(アワーレート)設定のポイント
実践上の原価計算の精度を高めるカギは、予定賃率(アワーレート)の精度です。これがズレていると、速報値と経理上の確定値が大きく乖離してしまいます。
- 昨年度実績の労務費総額 ÷ 作業時間総数で計算しているか?
- 機械別・部門別に区分された賃率になっているか?
- 新規採用・退職の影響を反映しているか?
- 賞与・社会保険料・福利厚生費を含めているか?
- 毎期、実績と比較して見直しを行っているか?
原価管理を支えるインプローブのシステム
インプローブの生産管理システム「Prevision」と製番別原価管理システム「アクロス」は、個別受注型製造業の原価管理に対応した機能を備えています。
Previsionの原価管理機能
- 製番別原価集計がリアルタイムで可能
- 予定賃率・実際賃率の両方に対応
- 材料費・外注費・労務費・経費の4区分集計
- 実行予算との比較で差異分析が容易
- 過去案件との比較で見積精度向上を支援
アクロスの特徴
「アクロス」は個別受注生産の事業規模が低めのところで、まずは原価管理中心で資材発注・工数実績収集をしたい企業向けの製番別原価管理(生産管理)システムです。販売・仕入管理は市販のパッケージソフトと連動するか、既存システムに追加連動できます。
現場での工数実績収集には、「サクスマ」(スマホ・タブレット・PC対応)や「サクっとPOP」(Windows専用タブレット対応)を組み合わせると、リアルタイムな原価集計が可能になります。
まとめ|「速報値で動かし、確定値で締める」
個別受注型製造業の個別原価計算は、「速報値で現場を動かし、確定値で経理を締める」という両輪の運用が成功の鍵です。実践上の原価計算で工事中のコストダウン意識を高め、経理上の原価計算で正確な決算を行う――この2つを両立させてください。
予定賃率(アワーレート)の精度向上、リアルタイムな製番別原価集計、過去案件との比較分析――これらが組み合わさると、個別受注型製造業の利益率は確実に改善します。
「製番別の原価がリアルタイムにつかめていない」「経理確定まで原価が分からない」というご相談、お気軽にお寄せください。インプローブでは、貴社の業務規模に合わせた最適な原価管理ソリューションをご提案します。
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