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移動平均法は大変!返品時に戻せない・締めると戻れない問題と、最終仕入法・総平均法のすすめ

在庫管理システムを導入する際、在庫評価方法として「移動平均法」「総平均法」「最終仕入法」のどれを選ぶか――この選択を間違えると、運用が始まってから取り返しのつかない苦労が待っています。
特に注意したいのが「移動平均法」です。会計の教科書では精度が高い方法として紹介されることが多いですが、実務の現場では「返品時に戻せない」「締めを行うと修正できない」という大きな問題があり、多くの中小製造業で運用負担が膨大になります。
このページでは、移動平均法の落とし穴と、中小製造業の実務に向いている最終仕入法・総平均法のすすめを、具体例とともに解説します。

在庫評価方法の3つの選択肢

個別受注生産の現場で使われる在庫評価方法は、主に次の3つです。

評価方法 計算の仕組み 更新タイミング
最終仕入法 最後に仕入れた単価で評価 仕入のたびに単価を上書き
総平均法 期間中の総仕入額 ÷ 総仕入数量 期末・月末などにまとめて計算
移動平均法 仕入のたびに平均単価を再計算 仕入のたびに即座に更新

「精度が高い」という観点で言えば、移動平均法が最も理論的に正確とされています。しかし、実務上の運用負担を考えると、話は変わってきます。

移動平均法の基本的な仕組み

移動平均法は、仕入のたびに在庫の平均単価を再計算する方式です。具体例で見てみましょう。

移動平均法の計算例

処理 数量 単価 在庫数 平均単価 在庫金額
1月1日 仕入 +100個 100円 100個 100円 10,000円
1月10日 仕入 +100個 120円 200個 110円 22,000円
1月15日 払出 −50個 110円 150個 110円 16,500円
1月20日 仕入 +50個 130円 200個 115円 23,000円

仕入のたびに「(既存在庫金額 + 新規仕入金額)÷ 合計数量」で平均単価を再計算する仕組みです。理論的には常に最新の平均単価で在庫評価できる点が魅力です。

移動平均法の落とし穴[1]:返品時に戻せない

移動平均法の最大の問題は、返品が発生したときに過去の平均単価に戻せないことです。

返品時の困難な例

たとえば、上記の例で1月20日の仕入50個(単価130円)を、1月25日に全量返品したとします。

「返品処理」が単純にできない

本来であれば、1月20日の仕入を取り消して1月15日時点の平均単価110円に戻すべきです。
しかし、移動平均法では「現在の平均単価115円」から「過去の110円」に遡る計算が極めて複雑になります。
その間に他の払出や仕入が入っていれば、すべてを再計算しなければなりません。

部分返品はさらに困難

全量返品でも大変ですが、部分返品はさらに困難です。「1月20日に仕入れた50個のうち30個だけ返品」という場合、残りの20個の単価をどう扱うか――会計上の明確な答えがありません。

返品パターン 移動平均法での対応
同日返品 比較的対応可能
数日後の全量返品 遡及再計算が必要、煩雑
数日後の部分返品 非常に困難、整合性確保が難しい
月をまたいだ返品 ほぼ不可能、別途特別処理が必要

移動平均法の落とし穴[2]:締めを行うと戻れない

もう一つの大きな問題が、月次・期次の締めを行った後、過去に戻って修正できないことです。

締め後の修正が困難な理由

移動平均法では、ひとつひとつの仕入・払出が連鎖して平均単価が形成されています。締めた後に「実は1月10日の仕入数量が間違っていた」と分かっても、その時点の平均単価を修正すると、その後のすべての処理に影響します。

「過去に戻れない」運用の現実

現場では、入荷数量の数え間違い・伝票記入ミス・後日判明する単価訂正など、過去に遡って修正する必要が頻繁に発生します。
移動平均法では、これらの修正対応が極めて困難で、現場担当者が「もう触りたくない」とシステムを敬遠する原因になります。

具体的に困るシーン

移動平均法のその他のデメリット

返品・締めの問題以外にも、移動平均法には実務上の困難が多くあります。

移動平均法の運用上の問題
  1. 計算が複雑で、現場担当者が理解しにくい
  2. 仕入のたびにシステム計算が走るため処理負荷が高い
  3. 過去履歴の修正が事実上できない
  4. 会計監査での説明が難しい
  5. システムが停止・トラブルになった場合の復旧が困難
  6. 中小規模では運用工数が見合わない

おすすめ:最終仕入法・総平均法

こうした移動平均法の問題を避けるため、中小製造業の実務には「最終仕入法」または「総平均法」がおすすめです。それぞれの特徴を見ていきましょう。

最終仕入法のメリット

最終仕入法は、最後に仕入れた単価で在庫を評価する方法です。シンプルさが最大の魅力です。

最終仕入法のデメリット

総平均法のメリット

総平均法は、期間中の総仕入額を総仕入数量で割って単価を算出する方法です。期末・月末にまとめて計算するため、運用負担が軽いのが特徴です。

総平均法のデメリット

3つの評価方法の比較

項目 移動平均法 総平均法 最終仕入法
計算の複雑さ
返品対応 非常に困難 期間内なら可 容易
締め後の修正 ほぼ不可 限定的に可 容易
リアルタイム性 △(期末確定)
運用負担
監査対応 難しい 容易 容易
中小製造業向け ×

どちらを選ぶ?最終仕入法vs総平均法

中小製造業には最終仕入法・総平均法のいずれかをおすすめしますが、業態によって向き不向きがあります。

状況 おすすめ評価方法 理由
仕入価格が比較的安定 最終仕入法 シンプルで運用が楽
仕入価格の変動が大きい 総平均法 変動を平均化できる
仕入頻度が少ない 最終仕入法 計算機会が少なくて済む
仕入頻度が多い 総平均法 変動の平準化効果が大きい
厳密な原価管理が必要 総平均法 平均単価で計算するため
少人数での運用 最終仕入法 運用工数が最小

在庫評価方法選定のチェックリスト

在庫評価方法を選ぶ前の確認事項
  • 仕入価格は安定しているか、変動が大きいか?
  • 1ヶ月あたりの仕入回数・点数はどれくらいか?
  • 返品が発生する頻度はどれくらいか?
  • 月締め・期締めの運用ルールは明確か?
  • 過去データの修正が必要になることはあるか?
  • 在庫管理を担当する人員体制はどうか?
  • 会計監査での説明のしやすさは重要か?

インプローブのシステムでサポート

インプローブの生産管理システム「Prevision」は、最終仕入法・総平均法・移動平均法のすべてに対応しています。導入時の業務分析の中で、貴社に最適な評価方法を一緒に検討させていただきます。

Previsionの在庫評価機能

スマホ連携で在庫精度をさらに向上

正確な在庫評価には正確な受入・払出記録が不可欠です。

まとめ|「精度」より「運用しやすさ」で選ぶ

在庫評価方法は、「会計上の精度」だけでなく、「現場での運用しやすさ」を含めて選ぶことが重要です。移動平均法は理論的に精度が高い反面、返品時に戻せない・締めると修正できないという大きな問題があり、中小製造業の実務には負担が大きすぎます。

多くの中小製造業には、最終仕入法または総平均法がおすすめです。シンプルで運用が楽、返品や修正にも柔軟に対応でき、会計監査での説明も明確です。

「在庫評価方法の選び方を相談したい」「移動平均法の運用に苦労している」「現在の評価方法を見直したい」というご相談、お気軽にお寄せください。インプローブでは、貴社の業務規模・仕入パターンに合わせた最適な在庫評価方法をご提案します。

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