導入事例|機械装置組立業
HOME  >  生産管理コンサルティング  >  導入事例|機械装置組立業A社
CASE STUDY

納期を守るための残業が常態化していた組立業が、
残業を減らして赤字案件まで減らした話。

受注生産の機械装置組立業A社(従業員120名)。
納期は守れていたものの、組立工程にしわ寄せが集中し、納期が近づくたびに残業が膨らんでいました。残業代の増加で赤字に転落する案件も増加。
業務改善と段階的なシステム導入で、残業時間を大幅削減し、赤字案件を着実に減らすまでの実際の流れを、本ページでご紹介します。

01|A社プロフィール

本事例は、受注生産の機械装置組立業A社における生産管理コンサルティングの実例です。 個人情報および機密情報保護の観点から、社名・地名・固有の数値は一部編集しています。

COMPANY PROFILE
業種
産業機械装置の設計・製造・組立(受注生産)
主要製品
食品・化学プラント向け搬送装置、混合機、自動化ライン
従業員数
約120名(設計18名/製造65名/管理・営業ほか37名)
生産形態
個別受注生産。1案件あたり3〜6か月のリードタイム
年間受注
約60〜80案件/年
既存システム
販売管理ソフト(市販パッケージ)+Excel管理

02|抱えていた課題 ─ 納期は守れているが、残業が止まらない

当初A社からは「納期は何とか守れているのだが、組立工程の残業がどうしても減らない」というご相談をいただきました。
残業代の積み上がりが原因で、利益が出るはずだった案件が赤字に転落するケースも増えており、経営課題として顕在化していました。

経営層が認識していた症状

  • 納期は守っているが、納期直前になると組立工程で残業が常態化
  • 残業代の増加で、見積時は黒字だった案件が赤字に転落するケースが頻発
  • 「うちは納期最優先だから残業はやむを得ない」という諦めムードが社内に蔓延
  • 組立担当者の疲弊と、若手の離職リスクが顕在化
経営層からの一言

納期は死守してきた。それは誇りでもある。でも、それを支えているのが現場の残業ということに気づいた。このままでは若手から辞めていく。何とか残業を減らしながら納期も守りたい」── これがコンサルティングをご依頼いただいたきっかけでした。

03|真因の切り分け ─ 残業の発生源はどこか

組立工程の残業は「結果」であって、「原因」ではありません。なぜ組立段階で時間が足りなくなるのか、上流まで遡って実態を整理しました。

残業発生のメカニズム

受注から出荷までのリードタイムは、案件ごとに3〜6か月。営業・設計・購買・加工・組立・出荷と工程が順番に流れますが、A社では 最後の組立工程に「時間のしわ寄せ」が集中 していました。

No. 真因となっていた要素 具体的な症状
1 設計の出図遅れ(最大要因) 客先との仕様打合せが長引き、図面が予定どおり出てこない。後工程の購買・加工・組立に使える時間がどんどん減る
2 長納期購入品の手配遅れ 図面確定を待ってから発注するため、調達リードタイムの長い部品が組立着手日に間に合わない
3 加工不良の連絡遅れ 加工外注先の不良発生や納期遅れの連絡が遅く、組立直前に「部品が足りない」が発覚
4 大量部品の未納把握漏れ 1案件で部品点数が1,000点を超えるケースも。1点でも欠ければ組立できないのに、未納部品の状況が部署間で共有されていない
組立着手日にすべてが揃わない

A社の組立工程は、部品が1点でも欠けると着手できません。にもかかわらず、上流で発生していた「ちょっとした遅れ」が積み重なり、組立着手日には毎回どこかの部品が未納。組立担当者が代替手段を探したり、部品を探し回ったり、結果として残業で帳尻を合わせる構図になっていました。

経営層との認識合わせ

ヒアリング結果は社長・工場長・設計部長・購買部長・製造部長に報告。「残業の真因は組立にあるのではなく、組立より上流の情報共有と部品手配にある」という共通認識ができ、全社プロジェクトとして取り組むことが決まりました。

04|4つの打ち手 ─ 組立より上流に手を入れる

組立工程の残業を減らすには、組立工程に手を入れても効果は出ません。残業の原因は「組立着手日に部品が揃っていない」ことなので、部品を必要なタイミングで揃えるための上流の打ち手を中心に設計しました。

打ち手 1:長納期購入品の事前発注とカムアップ

図面確定を待たずに発注できる「ほぼ仕様確定済みの長納期品」を、案件タイプ別に 事前発注リスト として標準化。受注確定の段階で先行発注し、納入予定日を カムアップ(督促・進捗確認) 管理に乗せました。

具体的な仕組み
  • 案件タイプ別の標準的な長納期購入品リストを作成(搬送装置/混合機/自動化ラインで分類)
  • 受注確定時点で、仕様変動の少ない長納期品を先行発注
  • 納入予定日をシステムに登録し、定期的なカムアップで遅延の兆候を早期検知
  • 仕様変更が出た場合の取り扱いルールも事前に整備(誰が判断し、誰が連絡するか)

打ち手 2:加工不良・加工遅延のカムアップ徹底

外注加工先からの「不良発生」「納期遅れ」の連絡が組立直前に来ることをなくすため、加工外注の納期遵守カムアップを徹底。納入予定日の数日前に必ず進捗確認を行うルールにしました。

具体的な仕組み
  • 加工外注先ごとに、納入予定日の何日前にカムアップするかを標準化
  • カムアップ担当者を明確化し、確認結果をシステムに記録
  • 不良・遅延が判明した時点で、代替手配や工程組み直しに着手できる体制
  • 外注先との関係も改善(「いつ確認が来るか分かっている」ため、先方も早めに連絡してくれるように)

打ち手 3:大量部品の未納をシステムで全部署共有

1案件で部品点数が1,000点を超えるケースもあるため、未納部品の把握は人の管理では限界がありました。システム化で「どの部品が・いつ入荷予定で・現時点で未納か」を全部署が同じ画面で見られる ようにしました。

具体的な仕組み
  • BOM情報と購買・加工の発注情報をシステムで一元管理
  • 案件ごとの「未納部品リスト」を画面で常時可視化
  • 営業・設計・購買・製造の各部署が同じデータを見られる
  • 組立着手予定日の何日前に未納が残っているかでアラートを出し、早期発見・早期対応の体制に

打ち手 4:出図遅れの原因切り分けと客先交渉

設計の出図遅れは、すべてが社内要因とは限りません。客先との打合せが長引いて仕様が確定しないケースが相当数を占めていました。出図遅れの原因を「社内要因」と「客先要因」に切り分け、客先要因の場合は 営業が責任を持って客先と納期交渉 する仕組みにしました。

具体的な仕組み
  • 出図遅れが発生した時点で、原因を「社内」「客先」に分類して記録
  • 客先要因の場合は、納期延長交渉または仕様凍結期限の合意を営業が実施
  • 無理な納期で受けて現場が残業で吸収する、という構図を経営判断で防止
  • 社内要因の場合は、設計プロセスの改善対象として継続フォロー

補助策:現品票による部品探しの工数低減

組立現場では、必要な部品を倉庫や仕掛置場で探す時間が想像以上に大きな工数を占めていました。すべての部品に現品票(バーコード付き)を貼付し、置き場所のルール化と組み合わせることで、「部品を探す時間」を大幅に削減しました。

「必要な時に必要な部品が揃う」状態を作る

4つの打ち手と現品票導入を通じて目指したのは、組立着手日に必要な部品が必要な数だけ、定められた場所に揃っている状態。これが実現できれば、組立工程の残業は構造的に減ります。逆にここが崩れている限り、組立だけ頑張っても残業はなくなりません。

05|導入の流れ ─ 6か月のタイムライン

業務改善とシステム導入を並行で進めた、A社の実際のタイムラインです。

1
MONTH 1
現状ヒアリング・真因の切り分け
営業・設計・購買・加工・組立・出荷の各部門へヒアリングを実施。組立残業の真因が「組立より上流」にあることを経営層と共有しました。
2
MONTH 2
長納期品の事前発注・カムアップルールの策定
案件タイプ別の事前発注リストを策定。長納期購入品・加工外注品のカムアップ運用ルールを文書化し、関係部署で合意形成を進めました。
3
MONTH 3
部品未納共有システムの導入(フェーズ1)
BOM情報と購買・加工発注情報を一元管理し、未納部品が全部署で見える仕組みを構築。1,000点規模の部品でも漏れがすぐに発見できる体制になりました。
4
MONTH 4
出図進捗管理と原因切り分けの仕組み化(フェーズ2)
出図予定日と実績日を記録し、遅れが発生した時点で「社内要因/客先要因」を切り分けるルールを運用開始。客先要因のものは営業が納期交渉に動くフローを確立しました。
5
MONTH 5
現品票・部品置場ルールの整備(フェーズ3)
すべての部品に現品票を貼付し、組立現場での「部品を探す時間」を削減。置場所のルールも統一しました。
6
MONTH 6
運用安定化・効果測定の開始
稼動後の運用ルール微調整を行いつつ、組立工程の残業時間・案件別利益のモニタリングを正式運用に。経営判断のサイクルが大きく短縮されました。

06|改善前後の数字

導入から6か月後・1年後に測定した結果です。あくまでA社1社の実例であり、業種・規模・改善範囲によって効果は異なります。

主要指標サマリー(導入後1年時点)

組立工程の残業時間
−60%
↓ 大幅削減
赤字案件の比率
−70%
↓ 大幅減少
部品未納による組立着手遅れ
ほぼ0
↓ 早期発見で先回り
部品を探す時間(現品票効果)
−75%
↓ 工数大幅低減

Before / After(代表的な変化)

BEFORE
月45h
組立担当の残業時間(1人あたり平均)
納期直前になると毎月45時間前後の残業。納期は守れているが、現場の疲弊と若手離職リスクが顕在化。
AFTER
月18h
組立担当の残業時間(1人あたり平均)
組立着手日に部品が揃う体制が確立。残業時間はおよそ6割削減。納期は引き続き遵守。
BEFORE
組立直前
部品未納の発覚タイミング
組立着手日に「あの部品が来ていない」と発覚。代替品手配や工程組み直しで残業発生。
AFTER
数週間前
部品未納の発覚タイミング
システムで未納が常時可視化。組立着手の数週間前に把握でき、代替手配や交渉に十分な時間を確保。
BEFORE
社内吸収
出図遅れへの対応
客先打合せが長引いた分も社内で吸収。組立工程の残業として帳尻を合わせる構図。
AFTER
原因切分
出図遅れへの対応
社内要因と客先要因を切り分け、客先要因は営業が納期交渉。社内のみで抱え込まない体制に。

07|担当者の声

プロジェクト終了後、社長・工場長・組立リーダーへ伺った率直なコメントです。

うちは「納期は絶対」という文化でやってきました。それ自体は誇りなんですが、その納期を守るために組立工程の残業が常態化していて、結果として見積では黒字だった案件が赤字になっているという構造に気づいたのが恥ずかしながらここ数年でした。インプローブさんは、組立に手を入れる前に「残業の原因は組立より上流にある」と最初に整理してくれて、納得感がありました。
代表取締役
出図遅れの原因を「社内」「客先」に分けて記録する、というだけのルールでしたが、これが効きました。客先要因のものを社内で吸収しないと決めたことで、営業も納期交渉に動かざるを得なくなった。結果として、無理な納期で受注して現場が残業で帳尻を合わせる、という構図がなくなりました。
工場長
一番ありがたかったのは、組立着手日に部品が揃っていること。これだけで残業が劇的に減りました。以前は「あの部品どこ?」と倉庫を探し回る時間が毎日のようにあったんですが、現品票が付いてからはほぼゼロです。残業が減って若手の表情も明るくなりました。
組立リーダー

08|A社の事例から見る成功の鍵

A社のプロジェクトを振り返ると、成功要因はシステムの機能ではなく、「組立の残業は組立工程の問題ではない」と認識を切り替えたことにありました。同じ受注生産系の組立業の方が参考にしやすいポイントを4つにまとめます。

1. 残業の真因を、上流に遡って探した

組立工程の残業を「組立が遅いから」と片付けず、上流の出図・購買・加工まで遡って真因を切り分けたことが起点になりました。組立だけ頑張っても、上流のしわ寄せは止まりません。

2. 長納期品の事前発注とカムアップを徹底した

「図面が確定してから発注する」という前提を見直し、仕様変動の少ない長納期品は受注時点で先行発注。納入予定をカムアップで管理することで、組立着手日に部品が揃う体制を作りました。

3. 1,000点規模の部品の未納を、システムで全部署共有した

部品点数が多い受注生産では、人の管理に限界があります。BOMと購買・加工情報を一元化し、未納部品を全部署が同じ画面で見られる仕組みにしたことで、早期発見・早期対応が可能になりました。

4. 出図遅れの原因を「社内/客先」に切り分けた

客先打合せが長引いた分を社内で吸収する、という暗黙の慣習を廃止。客先要因の遅れは営業が交渉すると決めたことで、現場の残業で帳尻を合わせる構図がなくなりました。

同じ業種の方へのメッセージ

「納期は守っているが残業が減らない」「見積では黒字なのに、終わってみると赤字になっている」── 受注生産の機械装置組立業で、こうした悩みは決して珍しくありません。 A社のように、組立より上流に手を入れることで、残業時間と赤字案件は同時に減らせます。同じような状況の方は、ぜひ一度ご相談ください。

同じ課題でお困りでしたら、まずはご相談ください

A社のような6か月のプロジェクトを、貴社にあった形でご一緒できます。資料請求・ご相談メールはいずれも無料です。

関連キーワード:生産管理コンサルティング 事例/機械装置 受注生産/個別受注生産/残業削減/赤字案件 削減/出図遅れ/長納期購入品/カムアップ/部品未納 共有/現品票