MRPとは?個別受注生産での生産管理の考え方
量産・見込生産では大きな効果を発揮する強力な手法ですが、個別受注生産においては導入に慎重な判断が必要となります。「便利そうだから」と安易に導入すると、現場で機能せず、宝の持ち腐れになってしまうことが少なくありません。
このページでは、MRPの基本から、個別受注生産との相性、導入判断のチェックリストまでをご紹介します。
MRPとは?基本的な仕組み
MRPは「必要なモノを」「必要な時に」「必要な量だけ」確実に調達するための仕組みです。アメリカで1960年代に確立された手法で、製造業の資材調達の効率化に大きく貢献してきました。
MRPの基本的な流れ
- 製品のBOM(部品構成表)をもとに、子部品・孫部品を展開(ツリー構造)
- 各部品の総所要量を計算
- 現在の在庫・手配済み数量を差し引いて正味所要量を算出
- 各部品の製作・購入リードタイムを加味して、いつ手配すべきかを逆算
- 計算結果を発注情報として出力
この5ステップを自動で実行することで、「足りない部品をいつまでに発注すればよいか」がコンピュータ計算で導き出されます。在庫の最適化と発注漏れ防止の両立を目指す、強力な手法です。
MRPは「製品仕様が事前に確定している」ことを前提にした手法です。
BOMが事前に整備され、部品ごとのリードタイムが安定していて、需要が予測可能――この条件が揃って初めて、MRPは真価を発揮します。
個別受注生産の特徴
一方、個別受注生産は次のような特徴を持ちます。
- 受注ごとに仕様が異なる:得意先要望に応じて毎回設計・製作する
- BOMが受注後に確定する:受注時点では部品構成が決まっていない
- 製番管理が中心:受注ごとに製番(製造番号)を発番し、紐付けで管理
- 製品在庫を持たない:原則として受注分だけを製造
- 部品在庫を最小限にしたい:仕様変更リスクのため、先行手配は限定的
このように、個別受注生産は「仕様が事前に確定しない」のが本質です。受注を受けてから設計を開始し、図面とBOMが確定するのは受注後数週間〜数ヶ月後になります。
MRPと個別受注生産の相性
MRPと個別受注生産の特性を並べると、相性の悪さがはっきり見えてきます。
| 項目 | MRPが前提とする条件 | 個別受注生産の実態 |
|---|---|---|
| 製品仕様 | 事前に確定している | 受注後に確定する |
| BOM(部品構成表) | 事前に整備済み | 受注ごとに新規作成 |
| 需要予測 | 予測可能・計画的 | 個別受注ごとに変動 |
| 製品在庫 | 計画的に保有 | 原則として持たない |
| 管理単位 | 品目別・期間別 | 製番別・受注別 |
個別受注生産は、MRPが前提とする条件と真逆の特性を持っています。このため、MRPベースの生産管理システムを個別受注の工場にそのまま導入すると、現場で機能しないケースが多発します。
よくある誤解と失敗例
個別受注生産の工場でMRP導入を検討するときに、よく見られる誤解と失敗パターンを整理します。
誤解[1]:「MRPがあれば在庫が最適化される」
確かに見込生産であればMRPは在庫を最適化します。しかし個別受注生産では、そもそも持つべき在庫が少ないため、最適化の余地が限られます。むしろ、MRPの複雑な計算が現場の柔軟性を奪い、設計変更への対応が遅れる原因になります。
誤解[2]:「ERPなら個別受注にも対応できる」
ERPパッケージの多くは「個別受注生産にも対応可能」と謳いますが、内実はMRP+製番管理の組み合わせで、見込生産がベースになっています。BOMが受注後に確定する個別受注では、MRPの恩恵を受けられず、製番管理の機能だけを使う形になりがちです。
失敗例:BOM整備に膨大な工数
「MRP導入のためにまず全製品のBOMを整備しよう」と意気込んだものの、個別受注では過去の製品BOMが将来の参考にならないため、整備の効果が出ません。数年かけてもMRPが回らず、最終的にBOM整備プロジェクト自体が頓挫するケースもあります。
MRPは手段であって目的ではありません。
「他社が導入しているから」「ERPには標準で入っているから」という理由で導入すると、自社の生産形態に合わず失敗します。
本当に解決すべき課題から逆算して、MRPが必要かを判断してください。
個別受注生産で「部分的なMRP導入」が機能するケース
個別受注生産であっても、次のような部分的な導入であればMRPの利用が可能です。
- 共通部品・定番構成品のみをMRPで管理する
- 見込生産品と受注生産品を切り分け、見込分だけにMRPを適用する
- 今後の見込生産比率の拡大を見据えて、MRP導入準備を始める
導入の成否は、システムそのものよりも導入範囲の見極めと業務との適合性にかかっています。便利なツールでも、使える環境がなければ宝の持ち腐れになります。
導入判断の簡易チェックリスト
MRP導入で失敗しないよう、下記のチェックリストをご活用ください。2つ以上にチェックが入れば、部分的なMRPの導入を検討してもよいでしょう。
- 製品在庫を持っている
- 複数案件で共通部品を使っている
- 原価管理は総合原価計算(※)で行っている
- 経営方針として将来的に見込生産化を考えている
※総合原価計算…一定期間における総コストを生産数で割り、1個あたりの製品原価を算出する計算手法
逆に、上記のどれにも当てはまらない純粋な個別受注生産であれば、MRPを無理に導入する必要はありません。製番管理を中心とした生産管理システムの方が、現場にフィットします。
個別受注生産に適した管理手法
個別受注生産では、MRPに代わって次のような管理手法が中心になります。
| 管理手法 | 役割 |
|---|---|
| 製番管理 | 受注ごとに製番を発番し、原価・進捗・出荷を紐付け管理 |
| 部品表のExcel取込 | 設計完了後の部品表を即時に手配へ反映 |
| 個別原価管理 | 製番別に材料費・労務費・経費を積み上げ |
| 工程進捗管理 | 製番ごとの工程進捗をリアルタイムに把握 |
個別受注に特化した生産管理システムでは、これらの機能を中心に組み立てられています。「MRPの有無」ではなく、「自社の業務にフィットする機能があるか」で判断してください。
まとめ|「自社に合うシステムを選ぶ」が最も重要
MRPは非常に強力な手配計画ツールですが、生産体制によっては真価を発揮できないことを理解しておく必要があります。個別受注生産の現場では、MRPベースのシステムを無理に入れるよりも、製番管理と部品表取込を中心とした管理の方が現場に馴染みます。
最も重要なのは、「自社の生産形態に合うシステムを選ぶ」ことです。MRPの有無で選ぶのではなく、自社の課題が解決できるかという視点で選定してください。
インプローブの生産管理システム「Prevision」は、個別受注生産に特化した製番管理とExcel部品表のダイレクト取込を中心に設計されており、MRPを必要としない受注生産の工場にフィットします。「自社の生産形態にMRPが本当に必要か判断したい」「部分的なMRP導入を検討したい」など、選定段階のご相談もお気軽にお寄せください。
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