生産管理システム導入プロジェクトの進め方 ― 成功に導く社内体制と取り組みのポイント
経理システムや給与システムは担当者個人で進めても問題なく稼働しますが、生産管理は多くの部署に関連するため担当者任せでは進みません。プロジェクトを組むものの、その先で「無事に稼働できない」企業が多いのも実情です。
このページでは、稼働まで確実に進めるためのプロジェクト体制づくりと進め方のポイントを解説します。
なぜ生産管理は「担当者任せ」では進まないのか
生産管理システムが他のシステムと決定的に違うのは、関わる部署の多さです。
| システム種類 | 主な関係部署 | 担当者任せの可否 |
|---|---|---|
| 経理システム | 経理部門のみ | ○ 担当者主導で稼働可能 |
| 給与システム | 人事・総務のみ | ○ 担当者主導で稼働可能 |
| 生産管理システム | 営業・設計・購買・製造・経理・情報システム | × 部署横断のプロジェクトが必須 |
生産管理は受注から出荷・請求まで業務が連動しているため、1つの部署だけでは判断・決定ができません。だからこそ、関係部署を巻き込んだプロジェクト体制が必要です。
プロジェクトを組んでも稼働できない2つの失敗原因
多くの企業がプロジェクトを組むところまでは正しく進めます。しかし、稼働できないまま頓挫するケースが少なくありません。よくある失敗原因は次の2つです。
失敗原因[1]:「コンピュータに詳しいから君が担当」
「コンピュータに詳しいから、君がプロジェクト担当だ」――この任命が失敗原因の1つめです。
生産管理プロジェクトの担当者には、コンピュータ知識ではなく業務知識が必要です。現場の業務フローを理解していない担当者が、ソフトメーカーと話を詰めても、「現場感覚から外れた仕様」がそのまま決定されてしまいます。結果として、稼働後に「使えない」という声が現場から上がります。
失敗原因[2]:社長が「担当者任せ」にしてしまう
プロジェクト責任者である社長が、担当者任せにして打合せに参加しないのが失敗原因の2つめです。
生産管理システム導入は、「組織を変更する」「業務を変更する」「業務を改善する」といった経営判断を含みます。これらは社長にしか最終決定できません。社長が現場の話を聞かないまま進むと、後から「その変更は認めない」と差し戻され、プロジェクトが停滞します。
どちらの失敗も、プロジェクト担当・責任者の役割を取り違えていることが原因です。
担当者には業務知識が、社長には最終決定の責任が、それぞれ求められます。
役割を正しく設計するだけで、稼働率は大きく上がります。
成功するプロジェクト体制の3つの役割
稼働まで確実に進めるためのプロジェクト体制は、次の3つの役割で構成します。
[1] プロジェクト責任者:社長
プロジェクト責任者は社長です。これは絶対のルールです。生産管理導入には組織・業務・改善の判断が含まれ、社長以外に最終決定できる人はいないためです。
ただし、社長が毎回の打合せに全て出る必要はありません。2〜3回の打合せに1回くらいのペースで、プロジェクトの進み具合をチェックするために必ず参加してください。担当者任せにすると、後の手戻りが大きくなります。
[2] プロジェクト担当:業務精通者
プロジェクト担当には、自社の業務を深く理解している業務精通者を選びます。コンピュータ知識は二の次です。
体制は導入方式によって変わります。
- 自社で生産管理システムを構築する場合:システム設計・プログラム経験者をプロジェクト担当とする。ただし業務経験が少ない場合は、その上に業務経験のあるプロジェクトマネージャーを置く
- ソフトメーカーに任せる場合:業務の精通者をプロジェクト担当にする。コンピュータ知識はソフトメーカー側が補ってくれる
[3] プロジェクトメンバー:関係部署の責任者
プロジェクトメンバーには、関係部署の責任者全員に必ず入ってもらいます。営業・設計・購買・製造・経理・情報システム――各部署の責任者がメンバーに入っていないと、決定事項が部署に持ち帰られて差し戻される、という事態が頻発します。
- 営業部門の責任者:受注・見積・納期回答の業務を代表
- 設計・技術部門の責任者:図面・部品表・設計変更の業務を代表
- 購買・資材部門の責任者:発注・受入・在庫管理の業務を代表
- 製造現場の責任者:作業実績収集・進捗管理の業務を代表
- 経理部門の責任者:請求・支払・原価集計の業務を代表
- 情報システム部門:インフラ・連携・運用面を代表(任せ切りにしない)
プロジェクト進行の4つのフェーズ
体制を整えたら、次は進め方です。稼働まで進めるための標準的なフェーズは次の通りです。
フェーズ1:現状分析(1〜2ヶ月)
各部署の業務フロー・課題を整理し、何を解決したいのかを明確化します。経営者ヒアリング・現場ヒアリング・業務フロー作成を通じて、システム化すべき範囲を絞り込みます。
フェーズ2:システム選定(2〜3ヶ月)
絞り込んだ要件をもとに、2〜3社の候補を比較検討します。デモ・実機検証を経て、業務適合度・処理速度・営業担当の質などを総合評価して決定します。
フェーズ3:導入準備・設定(3〜6ヶ月)
マスタ整備、画面項目の調整、テスト運用を進めます。この段階で必ず現場の担当者にテストしてもらい、違和感を吸い上げて修正します。設計変更が多発するフェーズなので、責任者の意思決定が頻繁に求められます。
フェーズ4:稼働・定着支援(3〜6ヶ月)
本番稼働後も、運用が定着するまで3〜6ヶ月のフォロー期間が必要です。「使い方がわからない」「ここを変えたい」という声を吸い上げ、小さな改善を継続することで定着率が高まります。
プロジェクト失敗を防ぐ運用ルール
体制とフェーズを整えても、運用ルールが甘いとプロジェクトは停滞します。次の3つを必ず守ってください。
- 定例打合せの頻度:原則として隔週1回、最低でも月1回は実施
- 決定事項の文書化:毎回、議事録を作成し、関係者に共有する
- 社長の参加頻度:2〜3回に1回は必ず参加し、重要判断を即決する
特に議事録の文書化は重要です。「あの時こう決めたはず」「言った言わない」の食い違いは、必ず後で問題化します。担当者の手間を惜しまず、毎回必ず議事録を残してください。
自社主導で進める意義
このプロジェクト体制は、自社主導で組み立てることが大前提です。外部コンサルにプロジェクト全体を委託すると、次のような問題が起きます。
- コンサル費用が数百万〜1千万円規模で発生し、システム本体より高くなることがある
- コンサルが間に入ることで、社長と現場の距離が遠くなる
- コンサル契約が終わると、運用後の改善活動が止まる
業務を一番よく知っているのは自社のメンバーです。プロジェクト体制さえ正しく組めば、外部コンサルなしでも稼働まで十分にたどり着けます。ソフトメーカーは選定後の伴走者として活用し、コンサルへの丸投げは避けるのが現実的です。
まとめ|「人選」と「役割」が成功の半分
生産管理システム導入プロジェクトを成功させるためには、体制づくりが半分の勝負です。プロジェクト責任者は社長、プロジェクト担当は業務精通者、メンバーは関係部署の責任者全員――この3つの役割を正しく配置すれば、稼働率は大幅に上がります。
「コンピュータに詳しいから担当」「社長は担当者任せ」という2大失敗パターンを避けるだけでも、プロジェクトの成否は大きく変わります。自社主導で体制を組み、関係者が腹を据えて進めれば、外部コンサル不要で稼働まで到達できます。
インプローブでは、20年・480社の導入支援を通じてプロジェクト体制づくりの段階からのご相談を多数いただいてきました。「体制をどう組むべきか」「役割をどう決めるか」など、選定前の段階のご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。
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