
在庫管理は、多くの製造業で日常的に行われている管理業務です。
部品や材料の数量を把握し、欠品や過剰在庫を防ぐことは、現場を回すうえで欠かせません。
個別生産では基本は製品在庫を持ちませんが、部材や一部ユニット在庫を持つ工場もあるため、在庫管理が必要です。
一方で、在庫数を把握しているだけでは、以下のような問題が起こります。
・工程は予定どおり進んでいるのに材料や部品が足りない
・在庫はあるはずなのに使えない
このような問題は、生産管理の視点で考えることで解消されます。
本記事では、在庫管理を生産管理の中でどのように位置付けるかを整理します。
あわせて、量産とは考え方が異なる個別生産における在庫管理のポイントについても解説します。
※本記事は「生産管理の全体像」の一部です。
生産管理全体の考え方を整理したい方は、以下の記事をご覧ください。
生産管理の全体像 ― 受注生産・個別生産の現場で機能する考え方と実践ポイント ―
在庫は、工程・原価・納期と直接関係する情報です。
部品や材料が不足すれば工程は止まり、余分に抱えれば原価や資金繰りに影響します。
生産管理の立場において、在庫情報は生産計画や受注判断に影響する管理対象の一つとして扱われます。
たとえば次のような場面です。
・受注を受けたとき、必要な部品がそろっているか
・工程を前倒しできる余地があるか
・発注を急ぐ必要があるかどうか
これらの判断は、在庫状況を把握していなければ行えません。
在庫管理によって数量が把握できていても、次のような判断は難しい場合があります。
・今ある在庫が、どの受注や製番に使われる予定なのか
・その在庫を使っても、他の受注に影響が出ないか
・在庫を使うことで原価がどう変わるのか
在庫管理をすると在庫の「ある・なし」を示すことはできますが、生産全体への影響までは判断できません。
ここで必要になるのが、生産管理の視点です。
生産管理では、在庫情報を工程管理・原価管理・受注管理と結び付けて扱います。
在庫管理を生産管理の中に位置付けて情報を使うことが重要です。
具体的には、以下のような情報を確認して、判断を行います。
| 管理領域 | 情報 | 判断 |
|---|---|---|
| 工程管理 | 工程の進捗と在庫の引当状況 | 在庫不足が進捗に影響していないか |
| 原価管理 | 原価計算に影響する材料使用量 |
・在庫の使い方が原価にどう影響するか ・大量購入すれば安価になるが、過剰在庫にならないか |
| 受注管理 | 今後の受注予定を踏まえた在庫の使い道 | 在庫を使って新たな受注に対応できるか |
このとき大切なのは、「在庫があるか」ではなく「使える在庫かどうか」という考え方です。
「使える在庫(=有効在庫)」の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
工程管理・原価管理・受注管理について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
個別生産では、量産と比べて在庫管理が難しくなります。
その理由の一つは、製番や受注ごとに部品構成が異なることです。
同じ部品名でも、以下のようなケースが多く、在庫を共通化しにくくなります。
・仕様が異なる
・使用数量が異なる
・特定の案件専用になっている
また、案件ごとに納期や優先度が異なるため、「在庫はあるが、この案件には使えない」という状況も起こりやすくなります。
個別生産では、在庫を極力持たないことだけを目的にすると、欠品や工程停止が頻発します。
重要なのは、以下のような考え方を整理することです。
・どの部品を在庫として持つべきか
・どの部品を都度手配で対応するか
・発注のタイミングをどう判断するか
そのうえで、個別生産の特性を踏まえて、次のような判断を行う必要があります。
・発注点をどう設定するか
・安全在庫をどの程度持つか
・ダブルビン方式が適しているか
工程管理・原価管理・受注管理について詳しく知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
在庫管理は、生産管理を支える重要な管理領域の一つです。
しかし、在庫数を把握しているだけでは、生産管理は機能しません。
在庫管理を含めた生産管理全体の考え方については、以下の記事で整理しています。
生産管理では、在庫を工程・原価・受注と結び付けて扱い、製造全体を安定して回すための判断に使います。
特に個別生産において、在庫の持ち方や発注の考え方を整理しないままでは、欠品やムダな在庫が発生しやすくなります。
まずは在庫管理の基本を押さえたうえで、自社の生産形態に合った在庫の考え方を生産管理の中に組み込んでいくことが重要です。