生産管理と工程管理の違い ― 目的と判断の対象が異なる2つの管理 ―

生産管理と工程管理という目的と判断の対象が異なる2つの管理の違いについて解説する記事のアイキャッチ画像

生産管理と工程管理は、どちらも製造業の現場で行う管理です。
両者は混同されやすい言葉であり、工程表を作成し、進捗を管理している状態を「生産管理ができている」ととらえているケースも見られます。

しかし、生産管理と工程管理は「何を目的としているか」「何を判断の対象とするか」が異なります。
この違いを整理しないまま工程管理だけを強化すると、現場の進捗は改善しても、納期・原価・採算・品質などに関わる全体の判断がうまくいかない状態に陥りがちです。

本記事では、生産管理と工程管理を「目的」と「判断の対象」の観点から整理し、両者の役割の違いを具体的に解説します。

※本記事は「生産管理の全体像」の一部です。
生産管理全体の考え方を整理したい方は、以下の記事をご覧ください。
生産管理の全体像 ― 受注生産・個別生産の現場で機能する考え方と実践ポイント ―

 1.工程管理の目的と判断の対象

工程管理は、作業や工程を計画どおり進めることを目的とした管理です。
工程管理の主な目的は、以下の通りです。
・納期を守ること
・作業効率を高めること
・現場の混乱やムダを減らすこと

以下のような問題があった場合、目的を果たすための判断を行います。
・遅れが発生している工程がある
 → 作業順序・作業方法の見直し、人員の追加、
   作業者スキルに基づいた配置変更、加工設備の変更
・人員や設備の負荷が偏っている
 → 工程計画の修正

工程管理において、判断の対象は「工程と作業」そのものにあります。

工程情報は作業が「遅れている」「詰まっている」といった状態を示すことはできますが、その影響を踏まえて全体を判断するには情報が足りません。
そこで必要になるのが、生産管理の視点です。

 2.生産管理の目的と判断の対象

生産管理は製造全体をどのように動かすかを判断するための管理で、工程管理はその一要素として含まれます。
生産管理の主な目的は、以下の通りです。
・納期を守ること
・コストを抑えること
・品質を維持すること
つまり、生産管理の目的はQCD(品質・コスト・納期)を最適化することにあります。

生産管理の判断対象には、次のようなものがあります。
・受注内容と納期条件
・必要な部品や材料と在庫状況
・工程ごとの進捗と負荷
・実行予算や原価の見込み
・売上や採算への影響

これらを総合的に見ながら、以下のような判断を行います。
・今の計画で納期を守れるか
・原価を抑えられているか
・どの受注を優先すべきか
・追加の受注を受けられるか

生産管理の役割や管理対象については、以下の記事で解説しています。

 3.工程管理だけでは生産管理にならない理由

工程管理と生産管理はそれぞれ次のような管理です。
【工程管理】
作業や工程を対象に、計画どおり進めるための判断を行う管理
【生産管理】
材料・工程・外注・在庫・原価・受注・売上などを対象に、製造全体を最適化するための判断を行う管理

工程管理を行うと、工程表・進捗状況・負荷状況を確認して調整ができます。
しかし、工程情報だけを見ていても、次のような事柄は判断できません。
・工程の遅れが、材料不足・部品不足・外注によるものかどうか
・工程の遅れが、原価超過につながるかどうか
・納期調整で主要な得意先の納期を遵守できるか
・納期が間に合わない場合に、在庫のクッション または 分納で客先要望に沿うことができるか

生産管理では、工程管理の判断を含めて、より広い視点で意思決定を行います。
工程管理の情報を、資材・外注・在庫管理や原価管理、受注・売上管理と結びつけて活用し、生産管理全体を支える判断材料としているのです。

生産管理の役割や考え方は、個別の管理領域を全体像として捉えることで整理できます。


工程管理と生産管理の関係については、工程管理の視点から整理した以下の記事でも詳しく解説しています。

(近日公開)工程管理を軸に見た生産管理の考え方

在庫管理・原価管理・売上管理について理解を深めたい場合は、以下の記事が役に立ちます。

• 生産管理と在庫管理 ― 在庫管理の基本と個別生産での考え方 ―
•(近日公開)生産管理と原価管理 ― 原価が合わない原因を案件単位で解明する ―
•(近日公開)生産管理と売上管理の関係 ― 製番・売上・売上原価をつなぐ ―

  まとめ― 生産管理と工程管理の違いを整理する

生産管理と工程管理の違いは「目的」と「判断の対象」の違いにあります。

工程管理は、納期遵守・作業効率の向上・現場のムダの削減を目的として、工程を計画どおり進めるための判断を行う管理です。

生産管理は、工程情報を含めた材料・外注・在庫・原価・受注・売上などを対象に、製造全体を最適化するための判断を行う管理です。

工程管理と生産管理の違いを理解することで、日々の進捗管理を工程管理で行いながら、製造全体の判断が必要な場面では生産管理の視点で最適化を図れるようになります。

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